
リチャード・ローゼンが書き下ろしたエッセイを3回シリーズでお届けします。
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マルマ|18のエネルギーセンター
ミツバチの例えは役に⽴つものですが、パタンジャリもその解説者たちも、プラティヤーハーラの具体的な実践⽅法については、ほとんど明らかにしていません。
ありがたいことに、プラティヤーハーラの実践法についての古典⽂献が残っています。そのひとつが『ヨーガ・ヤージナヴァルキヤ・サンヒター』( Yoga Yajnavalkya Samhita ) で す。
聖仙ヤージナヴァルキヤと、その妻、ガールギーの対話形式で展開するヴェーダの⽂献で、教義の⾻格はパタンジャリの⼋⽀則にあるものの、紹介されるテクニックはハタ・ヨーガに近いものです。
ヤージナヴァルキヤの技法は、ヴァーユ・プラティヤーハーラ、またはプラーナ・プラティヤーハーラと呼ばれ、体内の18のエネルギーセンターに 「意識」と「呼吸」を順に留めていくテクニックです。
これらのエネルギーセンターはマルマと呼 ばれ、伝統的にアーユルヴェーダでは、マルマには107のポイントがあり、それぞれが異な る⾝体的、または微細な器官やシステムとエネルギー的に結びついている、と考えます。
その位置は⽂献によって異なり、かなり曖昧な位置を⽰すもの*もありますが、ヤージナヴァルキヤの18のマルマに含まれるのは、⾜の第⼀指、⾜⾸、ふくらはぎの中央、ふくらはぎの付け根*、膝、会陰、体の中⼼*、⽣殖器、へそ、⼼臓の中⼼、⾸、頸部、⼼臓の中⼼、⾸ の⽳*(頸静脈切痕)、⾆の根元、⿐の根元、⽬、眉間、額、頭頂部です。
ヤージュナヴァルキヤは、頭頂部からつま先へと順に⾏うやり⽅を提案していますが、⽣徒の多くは、マルマの梯⼦をつま先から頭頂部まで登っていくのを好みます。どちらから始めても、または上向きと下向き、下向きと上向きと交互にやってみてもよいでしょう。 しっくりくるやり⽅を⾒つけてください。
⽣徒によると、ヴァーユ・プラティヤーハーラは、脳を鎮め、気づきを内⾯化し、瞑想状態を促す効果があるといいます。副次的な効果としては、呼吸への意識が⾼まり、呼吸を体に巡らせる感覚が⾼まるともいいます。
ヴァーユ・プラティヤーハーラは、プラーナーヤーマの準備として、あるいは独⽴したプラーナーヤーマとしても実践できます。または、ひとつかふつのマルマに集中的に働きかける治癒的なアプローチもあります。この⽅法の詳細については、 David Frawley 著 『 Ayurveda and Marma Therapy 』が参考になるでしょう。
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『ヨーガ・ヤージナヴァルキヤ・サンヒター』について
ヒンドゥー教の⻑い歴史のなかに、ヤージナヴァルキヤという名の⾼名な賢⼈は何⼈も登場します。『ヨーガ・ヤージナヴァルキヤ・サンヒター』が記されたのは、推定13〜14世紀。もちろん、インドの精神⽂学と同様、教義そのものはもっと古くから⼝伝で伝えられてきたものかもしれません。『ヨーガ・ヤージナヴァルキヤ・サンヒター』の翻訳者のひとりで、20 世 紀のヨガの巨匠 、T. クリシュナマチャリヤの⻑年の弟⼦だったA.G.モー ハンは、この物語の起源は2世紀まで遡る、と書いています。
Vol.3 ヴァーユ(風の)プラティヤーハーラを体験する へと続く。

RICHARD ROSEN リチャード・ローゼン 1983年にサンフランシスコのアイアンガーヨガ研究所の指導者養成講座を修了し、1987年からヨガを教える。四半世紀間 ヨガジャーナル寄稿編集者であり、6冊の著書のうちプラーナーヤーマに関するものが2冊出版ある。2000年代初頭にパーキンソン病を発症するも、現在も「ステージ2」を維持しており、パーキンソン病患者からの相談に体験に基づくヨガとプラーナーヤーマの実践を推奨している。集中講座では、古典の叡智と、セラピー効果が期待できるプラーナーヤーマについて、実践と指導の側面から立体的に紹介する。